不安のない老後生活を迎えるためのご提案

第1回 増加が止まらない高齢女性のお一人様

とても心配なご依頼者様のお一人暮らし

日頃、相続手続き業務を通じながら最も案じてしまうことは、ご家族の大黒柱であったパートナーを亡くされた奥様の今後のご生活。ご高齢者お一人様生活の行く末です。

お子様はご結婚されている場合が多く、離れて新しいご家庭を築かれているのが一般的です。

かく言う私も、サラリーマン時代は北海道を離れる転勤族であり、片親となった高齢の母へ遺された戸建て住宅に独り暮らしを強いらせざるを得ない時期がありました。

新しい家族を守るためは致し方ないことではあるですが、母の孤独な生活へ対する不安から生じる心理的圧迫感は非常に辛いものでした。

ご存じのように、雪国という環境下で高齢者の単身住まいは、様々な弊害を招きます。住宅周りの雪の処理、屋根からの落雪・水道管凍結被害、老朽化から引き起こる建物損傷、火の不始末による火災、雪上道路はおろか家の中でも起こる転倒。突発的な怪我、病気。そして孤立死・・・

又、独り暮らしを良いことに悪徳リフォームや訪問販売業者、オレオレ詐欺の標的にされるなど・・

心配の種は尽きることがありません。

世帯の性質変化が激しい札幌

特に、本州都市部へと若年世代の流出が多い北海道では、何とかこの高齢者一人暮らしの問題を解消していかなければいけません。下記グラフは、札幌市から道外へと転出された人数から、道内へ転入してきた人数との差。つまり、「転出が上回っている人数」を年代別に分別し、棒グラフ化されたものです。(*あくまでも「人数の差」ですので、転出された実際の人数ではありません)

商業都市札幌へ転勤や開業などの理由で転入されて来る方達も実際には多いのですが、それを遥かに上回る程の方逹が道外へ仕事を求めるなどの理由から転出しており、やはり20代の方達が大きなウエイトを占めていることが際立っています。

上記のグラフには、転出者の実数についての表記はありませんが、棒グラフの高さのピーク時、平成20年頃には約3万4千人もの方が、札幌市から道外へと転出されているのが実情です。

人口の「頼みの綱」札幌市内での出生数

ところで、道外への転出者がこれだけ多い札幌市の人口減少分をカバーしてくれる「頼みの綱」とも言うべき札幌市内の出生者数の動向は、近年どのような傾向を示しているのでしょうか。

左図が出生者を示す折れ線グラフです。

特筆すべきは、2004 年を節目に出生数は、  現在も出生数は伸び悩んでいることです。

尚、最近の札幌の人口数は、微少ながら増加している傾向にあります。

異常極まりない、札幌市の世帯数の増加

更にご覧いただきたいのが右のグラフです。

平成 2年から20 年の間で、札幌市の世帯数は、約2万3千世帯も増加していることを示しています。

先のように減少傾向ではあるものの、出生数が札幌市の人口維持に大きく貢献している事実は理解が出来ます。

しかし問題なのは、出生数自体は、世帯数の増加へとは直ぐに結びつかないということです。

お分かりとは思いますが、未婚の子供が世帯主になることはあり得ません。

既婚者となった時、新戸籍が編成されて、初めて世帯数の増加へとカウントされるのです。

なのに、このグラフ「札幌市の世帯数の推移」が示す異常とも言える程の近年の世帯数の増加は、一体何を意味するのでしょうか?

世帯数だが何故伸び続ける?

勿論、札幌市以外の道内遠隔地や道外から札幌市へと転入してきている労働者人口も、札幌の世帯数の増加へと関与しています。しかし、この異常なまでの世帯数増加を示すまでには至らないことは、先の転出超過数からも推察出来ます。(但し、転出者自身が世帯主とは限りませんので、これはあくまでも推論となります)

ということは、他にも大きな原因が存在する筈なのです。

そこで考えられるのが、婚姻を機に新戸籍が編成されることに伴って、世帯数が増加していること。つまり、核家族化がより一層進行しており、世帯数の増加に寄与しているのが原因の一つとして挙げられます。又、北海道は離婚が多いことで有名な土地柄。離婚を理由とする戸籍編成が世帯数の増加を後押ししていることも否めません。

ですが、先グラフの縦棒が示している部分。札幌の「全体の世帯数」に対しての「高齢単身者世帯」及び「高齢者の夫婦世帯」が占める割合については、この20年の間に約17%増加という驚異的に高い水準を示しており、これが異常な世帯数増加の主原因であることを教えてくれています。

言わば、札幌市の人口は、本質的な変化。つまり、「労働人口」を流出し、「高齢者人口」を迎え入れることによって、その人口数を維持しているのです。

相次ぐ病院閉鎖が生み出す「医療難民」の増加

そのことを裏付けるが、昨今の道内過疎地域で起きている「病院閉鎖」です。

地元産業や労働人口が疲弊する道内過疎地では、人口減少による病院収入の悪化や就業医師の人数不足により、病院経営が破綻し閉鎖へと追い込まれる医療機関が増加の一途を辿っています。

その煽りを受けて「医療難民」となってしまった方達が増加、専門医療機関や設備の整った高齢者施設を追い求め、過疎地から札幌へと移転する高齢者世帯が増え続けていることを良く耳にしています。

そして、高齢者世帯数の実際の増加数を示すのが下記表になります。

平成 22 年度では、65 歳以上の単身世帯  数は、既に8万世帯を上回る数値となっています。

下のグラフは、上のデータから身単世帯数の数値だけを抽出したものです。このグラフからもお分 かりのように、年々増加傾向であることを明確に示しています。

この調査では、対象が65オからとなっていますが、平成22 年度では、その入り口の層へ達した方(65オから69オ)の数は、実に2万世帯を超えています。

理論上では、グラフ象対者のご年齢が増す毎に、亡くなられる方も加増致しますので、棒グラフの縦幅も徐々に縮小傾向を示す筈なのですが、将来的に単身者世帯数へ補填される予備軍として、その背後に「高齢夫婦世帯」が待機しているため、年々、単身世帯数の縦幅は小さくなるどころか、逆に拡大し続けている実態を示しています。

そして、平成22 年の時点では、「高齢者単身世帯数」の予備軍である「高齢夫婦世帯数」が約8万2千世帯も存在していることが判ります 。

更に、今後もこの「高齢者単身世帯数」並びに「高齢夫婦世帯数」へカウントされる対象者の増加は、皆さんも良くご存じの高齢化社会現象から推察するまでもなく、極めて明白なことなのです。

平均寿命に比例するパートナーとの死別時期

とても喜ばしいことである一方で、先程の「高齢者単身世帯数」の増加問題。

特に女性の「高齢者単身世帯」を生み出す問題を一層深刻化させているのが、近年の止まらない「平均寿命」の更新です。

最近のデータ発表では、日本女性の平均寿命は86才から87才へと新たな更新を遂げました。

ところが、男女の平均寿命の格差は、次のグラフが示すように、パートナーとの死別時期にも大きな影響を与えてしまいます。

(上記の表は、平成 25 年度  札幌市札幌愛・目ネット事業報告書より抜粋)

日本男性の平均寿命は約80才。当然のことながら、ご夫婦では男性が先にお亡くなりになる傾向が強くなります。男性は70才を迎える頃まで、(上図の左グラフ 死別・離別の折れ線)が示すように、パートナーとの死別・離別に関しては、非常に緩やかな上昇傾向を示すに留まり、その割合も約10%と非常に低い水準に保たれます。

ところが女性(右グラフ)の場合、60代頃よりパートナーとの死別割合が急激に上昇、その後、その割合は加速度的に伸び続けてしまうのです。

つまり、このグラフからも、先の増え続ける「高齢者単身世帯」の「世帯主」は、殆どが女性であることが判るのです。

このような状況を踏まえて、次回では現状の高齢化社会についての実情についてより詳しく解説し、その先に見えてくる今後の高齢者世代に予想される問題点について解説を続けたいと考えます。