不安のない老後生活を迎えるためのご提案

まえがき〜不安のない老後生活を迎えるためのご提案

まえがき

シニアライフカウンセラーを受講された皆様にとっては、老後のライフスタイルを「どのように幸福に暮らしたら良いのか」という点について、最もご興味を抱かれていることと思います。

一般的に高齢期に達すると、とかく心身の衰えを理由に不活発な行動状態へと陥りがちとなってしまいます。しかし、この状態から何かしらの方法によって離脱しなければ、いつしか「不健康期」へと入り込んでしまい、将来的に「要介護時期」を迎えるリスクを高め、その期間までをも長期化させてしまう危険性が生じてしまいます。

時に、2016年9月19日(敬老の日)の北海道新聞に「超高齢化社会の絆」と題し、「健康寿命」を延ばす生活習慣の改善と社会活動への参加。そして、「ソーシャルキャピタル」の重要性についての記事が報じられました。
(*「ソーシャルキャピタル」の詳しい解説は、こちらから厚生労働省のページをご覧下さい)

日本人の平均寿命が徐々に延び続ける中、「健康寿命」についても如何に延ばしていくべきなのか、その重要性について以下のような内容が掲載されています。(*但し、要約をした内容です)
*「健康寿命」についての詳しい解説は、こちらから厚生労働省のページをご覧下さい

高齢期における気力や体力の衰えから、「もう出来ない」と自らの思い込みにより全てを諦めてしまうのではなく、自分が「出来ること」を見つけて社会活動に積極的に参加をしながら、心身ともに出来る限りの刺激を受け「楽しんでいきいきと暮らす」
それこそが「健康寿命」を延伸し、要介護リスクを減免してくれる秘訣である。

近年、医学界の分野でも「健康寿命」に関して、様々な角度から研究され報告がなされています。センテリアン(日本でいう「百寿者」)や同じ遺伝子を持つ双子についての研究報告では、「長生きの秘密は、健康寿命を延ばすことに大きな関連性を持っている」とされ、私達が永年信じて疑わなかった「長生きは個人の持つ遺伝子に左右されるもの」という既成概念は大きく覆されました。
つまり、人が運命的に制約される「遺伝子の差」に関わらず、「健康寿命」を延長するライフスタイルを保つことによって、誰しもが「長生き」を実現することが可能であることを立証してくれたのです。

ところで、「健康寿命」を延ばすライフスタイルの要素として一般的に挙げられるのが、「食事」「運動」「精神面」ということになります。「食事」と「運動」については、以前から専門的に研究が進められており、より明確な食物情報や運動量との関連性なども公開され、その効果も裏付け実証されてきていますが、近年では人間の「精神面」についても、その深層を探るべくフォーカスされてきており、「健康寿命」を脅かすと考えられる精神的な「ストレス」を中心に研究が深められてきています。

ところで、別記コラムでその詳しい「メカニズム」についてお伝え致しますが、「人体の老化」の発端となるのは、加齢によって自然発生する血管内部の「慢性炎症」であり、炎症による血液の流通機能としての役割低下が、細胞の活性機能を不活発にさせ、弱体となった細胞を徐々に死に至らしめることによって、目に見えるほどの「老化現象」へと導いていることが解明されてきています。

当初は、人間の「精神面」の中でも「ストレス」だけが、その「慢性炎症」の進行に関連を持つものとされてきました。ところが、最近の研究結果では新たな展開を迎え初めています。
実は、「慢性炎症」の進行を支配するものは「ストレス」だけではなく、人が欲求を果たす時の満足感と共に生じる「興奮」も大きく関与していることが判ってきたのです。
そして、ここでご着目を頂きたい点が、人が得る満足感による「興奮」には、「慢性炎症」の症状を「進行させる」ものと「抑制する」ものの2種類のタイプが存在するという真実なのです。

哲学めいた話しとはなってしまいますが、人類は巨大な生物に囲まれた原始時代の頃より、体格的弱者としての存在を克服するため、社会的集団活動を営みながら子孫繁栄を果たしてきました。つまり、遠い祖先の頃から、生存本能の一部として「社会的な共存共栄」や「相互扶助」を行った時、自然と喜びを感じるように脳や神経伝達系統にプログラムされ、行動も遺伝子レベルでコントロールされている可能性を秘めています。

故に、食欲や買い物、ギャンブルや性欲などの利己的な「快楽欲求」を果たすことによって、いくら満足感を得たとしても、それは人間に備わる本来の生存プログラムに相反する性質であり、結果、その時に生じる過剰なまでもの「興奮」は、急激な血圧上昇をもたらすばかりか、人体の「慢性炎症」を促進させるという悪影響を及ぼすことが判ってきたのです。
逆に、家族などを大切にする行動や社会貢献・ボランティア活動など世のため人のためにする行動。又は、社会活動に加わり「生きがい」を探求する行動などの目的が達成された時に生じる満足感からは、とても緩やかで穏やかな「興奮」が得られますので、先のような急激で危険な血圧上昇とは全く異なり、遺伝子レベルでも本来の生存プログラムに則したものと認識されるため「慢性炎症」の進行を抑制することに寄与し、「健康寿命」の延長に繋がると解釈されてきているのです。

さて、高齢期に入り込んでも、「生きがい」を模索しながら人生目標を再設定し、活発な行動を維持することは「健康寿命」を促進し、「老後を幸せに送る」重要な要素であることは間違いありませんが、行く先が不透明な日本経済低迷期の中で、将来迎える老後生活へのビジョンを思い描いた時に、「私達の老後生活は、本当に大丈夫なのだろうか」といった「漠然とした不安」が過ぎってしまうのが、現実のところではないでしょうか?

ここで、平成26年度の内閣府大臣官房政府広報室が発表した世論調査データをご紹介し、若干の補足解説をさせて頂きます。
(以下、(図○○)の部分をクリックすると、内閣府の調査データへと遷移を致します)

  1. 調査結果(図24)は、

国民が抱えている「現状の日常生活での不安や悩み」について、その具体的な内容について調査をした回答結果を表しています。
この図が示すように、統計上では国民の半数以上が「老後生活に不安を抱えている」ことが読み取れます。

  1. 調査結果(図25)は、

上記1の回答結果を年代別にグラフ化したものです。国民の「老後生活へ対する不安感」について、近年、その気運が一層高まってきていることが読み取れます。

  1. 調査結果(図8)は、

「現在の生活の資産・貯蓄の満足度」についての質問への回答結果を表しています。「やや不満」「不満」と回答した方は、統計上、国民の約6割にも及んでおり、その不満を感じている世代も高齢者世代から若年世代(但し、20才代は除く)へと末広がりに増加傾向にあることが読み取れます。

  1. 調査結果(図38)は、

「老後は誰とどのように暮らすことが良いか」についての質問への回答結果を表しています。「可能能な限り子供には面倒を掛けたくない」といった、一般的な親心が汲み取れる数字となっています。しかし、70才を超える頃から、「背に腹はかえられない状況」へと変化していくことが読み取れます。

以上の調査結果をご覧頂いた上で、皆さんにご着目頂きたい点として、現状の日本では「普段は口には出さない」けれども、実にこれだけ多くの方が、心に内在する「共通の不安や問題」を大なり小なりに抱えていらっしゃるという点です。

誰しも、将来の突発的に発生する災害や障害について、予期しながら廃除することはとても容易なことではありませんが、「はっきりとしない漠然とした不安」を常に抱えながら日常生活を続けるということは、既に精神的な「不健康期」への入り口に差し掛かっている兆候であるとも言えます。
そこでお考え頂きたいのが、多くの方が抱える「共通の問題や不安」を改善する余地は、全く何処にもないのだろうかという点です。
共通認識を持った私達の多くが、共に手を取り協力しながら試行錯誤を繰り返せば、必ず改善策が見つかり解決方向へ向かわせることが可能と考えられます。
そのためには、「はっきりとしない漠然とした不安」をいつまでも放置せず、現実に「老齢化社会」で起きている。又、今後予測される問題等について、詳しくその中身を見聞する必要があります。

このコラムでは、それらの問題点の抽出とその分析や結果についてご報告をさせて頂き、皆様からのご意見も伺いながら、老齢化社会における「共通の不安と問題」の解消へ向けたご提案をさせて頂きたいと考えております。
そして、私達がこれから採るべき社会活動を明確にした上で、皆様からのお力添えを頂戴しながら、その活動をより具現化して行きたいと願っております。

皆様におかれましては、この主旨を充分にご理解の上、共に永き「健康寿命」を得るためにご参加・ご協力を頂ければ幸いと考えております。