老齢化社会を生き抜くための豆知識

第2回 誰も教えてくれない、「法定相続人」の真実!

皆さんこんにちは、行政書士の小松です。

第1回目のお話しでは、「法定相続人」「法定相続人以外の人」の関係を図式化してご覧頂きました。皆さんには、あまりも簡単すぎました?

ここから徐々に中身を濃くしていきます。期待して読んで下さいね。では、まず皆さんへ

「法定相続人」とはどんな人?

こんな質問から始めさせて頂きます。どうでしょうか?

「そりゃ~あんた、法で定められる相続人のことだよ」ですって?

おみごと ! ご正解です。

ただ、もうチョット説明としては、言葉を付け加えた方が良さそうですよね。何といっても、皆さんは、「シニアライフカウンセラー」なんですから・・・

では、こう答えてみてはいかがでしょうか?

「法によって決められる、遺産を受け取る権利を得る人」

どうでしょうか、少しは説明として様になってきた感じがしませんか !?

「権利」って、何でしょう?

さて皆さん、ここで突然、「権利」という言葉が登場しました。  口喧嘩で 「あんたになんか、そんなこと言う権利ないわよ!」と、良く出てくるあのフレーズ。

日常会話でも良く出てくる言葉の一つでもあります。

それでは、皆さんに1つお願いがあります。

この「権利」という言葉を、小さな子供でも理解できるように説明をしてみて下さい。

「6才の子供に説明ができなければ、理解したとは言えない」

天才 “ アインシュタイン ” は、こんな素晴らしい名言をこの世に残しています。

何でこんなお話をしているのかと言いますと・・・

実は、法律(  特に民法  )の創られる根底の部分。

法律が創設される大きな理由の1つに、この「権利」を尊重する意図が存在するのです。

言い替えると、「人の権利を守る(尊重する)為に、世の中の多くの法律は創られている」と言っても過言ではありません。

ということは、法律を理解する上では、非常に重要な「キーワード」となるわけです。

では、先程の質問に戻りましょう。 どうでしょうか、上手く説明ができそうですか? 私たちが日頃、何気なく使っている言葉なんですが、いざ説明するとなると・・。

「・・・・ん? い、意外と・・・ム、難しい・・・」 そうですよね、そのお気持ち・・・十分にお察し致します。

では、1つ “  大ヒント ”  を差し上げましょう。大抵の言葉には、反意語というものがあります。つまり、反対の意味を持つ言葉です。

そこから、考えてみると分かり易いですよ。

「権利」の反意語は、「義務」という言葉です。ほら、「義務」という言葉だったら、何とか説明がつきそうですよね!

ハイ、そうです。  「義務」とは、「何々をしなければならない」という意味です。

ここで、注目! 「義務」には、自分の意思によって “ 選択をする余地がない ” という点です。

では、本題の「権利」という言葉の意味はどうでしょうか? 「義務」の反対の意味なのですから・・

ハイ、そうですね。 「何々をしても良いし、何々をしなくても良い」という意味です。

つまり、 “  自分の意思によって、選択が可能な状態 ”  を表現しているわけです。

この二つの言葉は、「法律」や社会のルールと密接な関係を保ちながら、私達はその状態を守られている(守らさられている)し、又、社会的(周囲の人)にも、公然にその状態を保っている(保たれている)ことが、認められていることを表すのです。

運転免許証が持つ意味とは

ここで、この「権利」と「義務」を我々の身近なもので、例えてご説明をしましょう。

「運転免許」が、正にそれに該当します。

人が公道で車を運転する場合、運転免許を取得しなければなりません。(義務ということですね)

でも、苦労して運転免許を取得した。その後についてはどうでしょう?

免許を取得したからといって、 “ 毎日、運転しなければならない ”

というわけではありませんね。

ペーパードライバーという言葉があるように、免許を取得しても実際には、運転をしない人もいるのです。

つまり、免許を取得した後は、運転をしても良いし、しなくても良い。と、いった状態が法律によって公然に保たれている。

そんな風に、言い換えることが出来るわけです。

ほ~ら、ここに選択の余地がでてきました。(つまり、これが権利ということなのです)

つまり、「運転免許証」は、車を運転する権利を証明する「証明書」なのです。更に付け加えれば、免許には「更新」というのがあります。

世の中の法律によって守られている多くの権利は、大概、「期限」が設けられており、この権利を継続したいならば、「更新」や「届出」をすることが義務として課せられています。

ばかばかしいお話しと感じられたかもしれませんが、「権利」という言葉は非常に重要なので、あえて、ご説明をさせて頂きました。これで、皆さんも「権利」がどういうものか、ご理解頂けたと思います。 そして、この「権利」という言葉が、法定相続人の立場を理解するのには、とても重要な役割を果たすのです。

驚愕!一人歩きし始めたという割合

本題に戻しましょう。ここまでの説明で、冒頭の「遺産を受け取る権利を得る人」(俗に言う相続権の発生)とは、「遺産相続をしても良いし、しなくても良い」選択権を与えられた人である。と、解釈できることがお分かり頂けたかと思います。

 

何故、皆さんに、こんな説明をくどくどしているのか説明しますと、実は、こんな理由からなのです。

私の事務所にあるお客様から、こんなお問い合わせを頂いたのがきっかけです。

「先生のホームページを観て疑問に思ったのですが・・・。仮に、夫が亡くなったとして、妻と子供1人が法定相続人となった場合、家と預金を 2 分の1づつ等分にきっちりと分けなければいけないのでしょうか?」

驚愕しました。

確かに、 12 という取得割合は、私のホームページや相続手続きに関係する本など、どれを取っても、正に「当然!」のことのように書かれています。

いつの間にやら、この   という数字自体が、世の中で勝手に一人歩きを始め、自然と浸透されていたことに気が付かされた瞬間だったのです。

ご察しの良い皆さんには、この質問に対する「解答」について、もうお分かりになりますね。正答は、ズバリ「NO」ということになります。

何故なら、「法定相続人」は、遺産を受け取る「権利」を得るのですから、“受け取っても・受け取らなくても良い”ということになります。これは、解釈のしようによっては、遺産を受け取る割合についても、自由に設定(選択)が可能であることを意味するのです。

つまり、法定相続人同士がお互いに納得をする(ここが、ポイントです)ならば、極端な話、受け取る割合を50対50にしようが、100対0  にしようが構わないということです。

どうでしょうか?このことを理解するには、「権利」という言葉の意味が極めて重要だということが、お分かり頂けたでしょうか?ちゃんと理解ができていないと、こういった解答に辿り着くことが出来なくなってしまうのです。

しかし、ここでもう一つ大きな疑問が湧いて来ませんか?

世の中では、「借金も財産のうち」と良く言われていますよね。財産を受け取るのが「権利」であって、

受け取っても・受け取らなくても良いのであれば、

借金(債務)についても、受け継ぐことは自由・・・??

次の第3回目は、この辺のお話を中心に解説致しましょう。